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執筆者の写真YUJIN SAGISHIMA

迫る竹害:藤沼教授インタビュー前半

皆さんこんにちは。SDGs推進室の鷺島です。自然豊かなICUのキャンパスですが、実はその背後で竹の侵略が進んでいることをご存知でしょうか?今回は環境研究メジャーの藤沼教授に、ICUが直面している竹林課題について教えていただきます。では、早速ICUの竹林の現状について見ていきましょう!


ICUで拡大する竹林

ICUの竹林はそもそもどこにあるのでしょうか?ICU西側の森の中や教員住宅の近辺にも見受けられる竹林ですが、ICU生にとって最も目につきやすいのは泰山荘の横にある竹林です。現在、泰山荘横の竹林は全く管理がされていない放棄竹林となっており、竹林内には新たに竹が生える余地がないため、毎年外側にその範囲を広げています。既に泰山荘の敷地内にも浸食が確認されていることからも、その危険性が垣間見えますね。

写真左:泰山荘横の竹林。ダイアログハウスを出てすぐ右手に見える(筆者撮影)

写真右:竹林の範囲を示すロープからはみ出て泰山荘に浸食する竹(筆者撮影)


もっと視覚的に竹林の存在が明白なデータも存在します。ICUでは定期的にキャンパス内の植生を調査しており、以下の画像左は2018年の調査結果となっています。2012年に作成されたマスタープラン(画像右)を参照すると、キャンパスの植生管理に考慮されていなかった竹林が、現在大きな割合を占めていることが分かります。

図左:ICU相観植生図2018年版

図右:目標植生マスタープラン2012年版


これは典型的な竹林の拡大スピードであり、もちろん拡大に伴って元々あった植生は失われていきます。特にICUの森は世代交代の時期にあり、大きな木が続々と枯れています。木は枯れても数年間立ち続けますが、竹によって土地面積や栄養が不足する、日光が遮られると次の世代の苗木が十分に育たず、広葉樹がなくなる危険性があります。ICUの森の中にはアオキやシュロといった外来侵略種も存在しますが、竹はその背景が少々特殊なようです。恐らく、竹は意図的に持ち込まれました。


竹は生活の要だった

意図的に持ち込まれたと言っても、別に武蔵野の植生を破壊しようと目論んでいたわけではありません。金属が希少かつ高価であった当時、竹は日常生活に欠かせない物資だったのです。様々な日用品を作るために、太いモウソウチクと細いマダケとを別々に管理していたと考えられています。太いモウソウチクはその太さを活かして器や桶に、マダケはその細さと扱いやすさから筆や水筒や竹箒、そして民家の屋根や生垣にも使用されてきました。また、どちらの竹も竹炭として農業にも用いられていたことが分かっています。しかし、安くて大量生産が可能なアルミが登場すると竹の需要は急落します。時間をかけて竹を成形する代わりに、アルミ製の商品を買うことが主流になっていったのです。余談ですが、この竹からアルミへの変遷はある食品から紐解くことができます。キッチン用品の多くは竹から作られており、大根おろし器も例外ではありませんでした。しかしアルミ製大根おろし器が一般化すると、目の細かさが起因して大根おろしから辛みが抜けてしまったのです。そこで生まれたのが、大根と唐辛子を共に擦る紅葉おろしなのです。少し面白いでしょ?話を本筋に戻すと、実は竹炭としての活用は現在も行われています。ICUでも竹林を間伐した竹材を学内のキャンプファイヤーエリアで竹炭にしたこともあります。ところが当時に比べて住宅が増えたことで、炭化させる際は近隣住民や消防署に事前告知をしなければいけません。竹の活用が自由に行えなくなったのは確かだと言えるでしょう。


ICUの竹林管理

さらっと間伐した竹材というフレーズが登場しましたが、ICUではこれ以上竹林の範囲を広げないために管理が行われています。竹はそれぞれの間隔が十分に空いていると寂しがってその間を埋めようとしますが、これ以上は窮屈だと気付くと竹林の外側に広がっていきます。最初に「泰山荘横の竹林は竹が内側に生える余地がない」と書きましたが、竹林管理では間伐によって竹が内側に生える余地を作っていくのです。間伐の旬は秋から冬にかけた蚊が少ない時期で、ICUではこの間に傘をさして通れる間隔を目安に間伐を行い、そして春先に筍を収穫することで更に間引いてきました。間伐された竹材は斜面に直角になるように積み上げることで、土壌流出を低減する土手として活用されています。このような間伐を行っていても、竹は竹林外にも顔を出します。間伐の際に外側に逃げ出した竹はなるべく切るようにはしているのですが、全てには対処できず、竹林が広がっているのが現状です。



写真:密になっている竹に印を付け、それを間伐する様子(推進室撮影)


このような現状を踏まえて、周辺環境を守るためにも、竹林自体をなくすことを考慮する必要があります。もしそうと決まれば、最早一本の竹も残す余地はありません。竹林の竹を全て切ることになります。しかしそれで終わらないのが竹のしぶといところで、まだ生きている根っこから春先に芽が出てきます。これをまた全て取るのですが、それでもまだ終わりません。最終的に三年ほどかけてようやく竹の栄養が枯渇し竹林は無くなります。竹林が無くなれば、コナラやクヌギを適切に植え管理することが可能です。そうすれば、ようやく本来の武蔵野森林が戻ってくることでしょう。


写真:地表に顔を出している竹の根っこ(筆者撮影)


最後に

前編となる本記事ではICUの竹林やその管理方法について纏めてきましたが、いかがだったでしょうか?ICUではいつでも放棄竹林の危うさを見学することができます。是非時間があるときに寄ってみてください!後編では、ICUの管理体制により深く切り込むと同時に、学生が竹林課題にどう関われるのかを言及していきます。本記事を読んで、実際に竹林管理に参加したい、筍を掘りたいという方は是非そちらもご覧ください。以上、ここまで読んでくださりありがとうございました。


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