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執筆者の写真YUJIN SAGISHIMA

何を食べているのか興味を持つ。食材と添加物と社会問題の話

つながるエシカルでは、授業の担当教授に授業内容に対して私たちが行動に移せることをインタビューし、記事にまとめています。この記事が、自分らしい日常を過ごす手助けになれば幸いです。

今回は環境毒性学について、布柴先生にお話を伺いました。私たちが普段目にする食品について、健康やフードロスについて語っていただきました。


<布柴先生のプロフィール>

1990年医学博士(京都大学)取得。Harvard School of Public Health Postdoctoral fellow、東北大学大学院生命科学研究 科分子生命科学専攻准教授を経て、2009年にICU教授。生物 学メジャー・環境研究メジャー担当。専門は、微生物遺伝学・環 境遺伝毒性学、環境教育など。

 

1.私たちは何を食べているのか

鷺島)学生の中には自炊を行う人もいれば行わない人もいますが、どちらの場合も、自分でスーパーに買い物に行くことがあるかと思います。学生が商品に含まれている化学物質を考慮した買い物をするとしたら、布柴先生は何から気を付けれるのが良いとお考えですか?

布柴)まずこの授業ですが、環境研究メジャー担当の藤沼先生と2人で担当していて、前半は藤沼先生が、自然環境を対象とした毒性学、後半は私が、人々の生活環境を対象とした毒性学について講義しています。私の授業では、化学物質の毒性、特に生活環境、労働環境、食環境などに関わる毒性について話しています。中でも学生たちがもっとも興味を示すのが食環境ですね。まず、食べるということに興味をもつ事が大事だと考えます。スーパーマーケットに並ぶ商品を当たり前だと捉えるのではなく、商品をなぜと疑問をもってみるんです。例えば、当たり前のようにスーパーには赤いタラコが並んでいますが、タラのお腹を開いても赤い卵はでてきません。辛子明太子ならば漬ける過程で唐辛子色になるかもしれませんが、タラコにそんな過程は存在しません。実は赤という色は食欲をそそる色であり、タラコはわざと赤く染めているんです。タラコが青色だったら食べてみたいと感じますか?

鷺島)確かに、食べたいとは思わないですね。

布柴)赤色には手に取りやすくする、そういった効果もあるそうです。他にも、肉の場合も綺麗な赤色の肉は取るけど少し黒くなっていたら取らない、みたいなことがあるでしょ?スーパーに並べられているお肉は綺麗な赤色が保たれるように亜硝酸ナトリウムを発色剤として使っています。

こういったように、食品を買う時は自分が何を食べているのか、興味をもつ事がとても大切です。商品を買う時に裏面の原材料名欄からどんな食品添加物が入っているのか確認してみる、もちろん現在では厳密な基準から商品に入っている量は限られています。人生の間にこれだけ食べても大丈夫という数値があって、更に体に吸収される量はそれよりも少なくなるので、私もほとんど問題はないとは考えています。でも決してリスクはゼロではない。そのことを知ったうえで食品を選ぶ必要があると考えています。


2,添加物と無農薬

鷺島)科学的な基準があるのは安心に繋がるのは確かですが、それでも原材料名欄に添加物の名前があると不安に駆られる、といった人もいるかと思います。

布柴)添加物や化学的な名前に不安に感じるというという感情はとても理解できます。先ほど述べたように、実際はどんな物質でも健康に害を及ぼす量は含まれていません。ですが無添加や無農薬の製品の方がリスクが減るので、そういった商品を買った方が精神的な不安は減るかもしれません。一方で防腐剤が入っていないと腐りやすくなるので注意が必要です。食中毒になっては元も子もないので、キチンと保存して悪く前に食べる必要があります。添加物が入っていなくて健康的だ、ということは逆に鮮度も落ちやすいことを覚えておくと良いですね。

無農薬の製品は安全性は高いけど、環境にやさしいわけではない。食品に対しても多面的な捉え方が必要です。


3.賞味期限とフードロス

布柴)悪く前に食べるという話だと、賞味期限というものがあります。なぜ賞味期限が出来たかというと、添加物によってスーパーに全国から食品が集められるようになって、するといつまでに食べれば良いのか分からなくなってしまうので賞味期限というものが制定されたんです。ですが賞味期限が当たり前になった今、賞味期限が長いものを無意識に買うようになっています。コンビニでも、スーパーでも、賞味期限が長いものと短いものがあったら多くの人が長いほうをかってしまうんです。

鷺島)私も賞味期限前に食べると分かっていても、つい賞味期限が長い食品を買ってしまいます。

布柴)そうなんです。そうするとスーパー側も賞味期限が短くなったものは代えざるをえなくなり、大量のフードロスに繋がっています。悪循環が起こっているんです。本当は賞味期限を超えても食べられるので、賞味期限が短い食品を買うといった選択が出来るようになってほしいですね。一方では、防腐剤など長持ちさせるために食品添加物を添加し、また一方でそれらがまだ食べられるのに廃棄する、おかしな話だと思いませんか?

 

以上、布柴先生のインタビューでした。主要なポイントは以下の通りです。


布柴先生と考えた私たちにできること

  1. 現在の食品安全委員会の基準は安心できるレベルだが、リスクはゼロではない。これを理解した上で、食品を選ぶ必要がある。

  2. 無添加、無農薬、地産地消の製品の方が健康へのリスクは低い。しかし防腐剤が入っていない分、キチンと保存をして食中毒のリスクも減らすこと。

  3. 無添加、無農薬、地産地消が体に良いからと言って、環境や人権に配慮されているとは限らない。自身が大事にしたいことを意識して、食料品を選ぶ。

  4. 賞味期限が長い製品を買うことがフードロスを助長している。賞味期限が切れた食材も食べれるので、賞味期限が短い食材を選ぶことでフードロスを減らすことができる


食は分かりやすく自分と繋がっている分野です。また食は健康だけではなく、フードチェイン上で人権や環境に大きく作用している分野でもあります。何を買うのかを自ら選択することが心の健康にも繋がります。是非この後の食事から自分が食べているものに興味を持ってみてください!

また感想や意見など、Google form(リンク)からお待ちしています。

布柴先生には一般教養科目の環境研究に対して、その内容や込められた思いについてインタビューを行いましたので、そちらも是非確認してみて下さい。

ここまで読んでくれてありがとうございます。また別の記事でお会いしましょう!


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