岩切学長 × SDGs推進室 インタビューシリーズ(その3)
「つながるエシカル」は、授業の担当教授にその授業に対する思いや授業内容についてインタビューを行い、まとめた記事を掲載する、ICU生によるWebメディアです。記事が、自分らしい日常を過ごす手助けになれば幸いです。
今回は「岩切学長 × SDGs推進室 インタビューシリーズ」と題しまして、SDGsの観点から岩切正一郎学長にお話を伺いました。全3回の本シリーズ、最終回では、「学生である私たちにできること」に注目して、岩切学長に語っていただきます。
<岩切学長のプロフィール>
東京大学大学院博士課程満期退学。パリ第7大学DEA。国際基督教大学アドミッションズ・センター長、教養学部長を経て、2020年4月から学長就任。文学メジャー担当。専門は、近現代フランス詩、フランス演劇、フランス文学など。
町井)2021年に、ICUはSDGs推進室を設置しましたが、その背景にはどのようなお考えがあるのでしょうか。学生に期待されることはありますか?
学長)先生と学生と職員、ICUの共同体のみんなが関わる場所として、SDGs推進室を開きました。例えば、これまでもICUの学生は、食堂の容器のリサイクル、古着売買イベントの開催、国際ディベートへの参加といった、SDGs的な活動に取り組んでいました。今では、世界の共通語として、SDGsがあります。SDGsというみんなが理解してくれる概念によって、バラバラだった活動を1つの活動として捉えることができるようになったわけです。ICUの活動を外から見て分かるように、つまり、グローバルな社会運動や価値観の文脈の中にICUを置いて、可視化するためにSDGs推進室を作りました。活動の内実が変わるかどうかはわからないけれど、SDGs推進室によって、一見バラバラだったけれど、実は共通していたものが見えるようになります。それに、こうやって皆さんで集まること、繋がることができますよね。孤立化せずに活動を続けることができる。また、そうすると、自分たちのやっていることが別の目標とも関わってくるので、広い視野で自分たちの活動を見ることができます。ぜひ、みんながSDGsのどこかの面で繋がって、考えていってほしいと思います。
町井)実際、SDGsが授業でも頻繁に取り上げられており、学びを実践する重要性を感じている学生は多くいます。一方で、「議論」することはできても「行動に移す」ことのハードルが高いと感じる学生も多くいます。
学長)具体的に何か社会的な運動をおこす、というのも行動です。だけど、学生時代は、時間でいえば4年間しかないんです。皆さんには、これから何十年もあるじゃない。だから4年間のスパンだけで捉えて、「行動を起こす時期」だと見る必要はないと思います。それは、20年、30年後の自分の基盤となっていると思います。そういう将来の行動のための、自分の価値観をつくるのも行動の一つなんです。すぐに目に見える行動も大事だけど、それだけが行動じゃない。それぞれの人が自分の行動様式を選んでいくことが大切だと思います。
町井)キャンパスに来れず、授業を受けてそのままになってしまうということを不安を感じている友人がいたため、学長のお話にとても勇気づけられました。
学長)ICUのキャンパスの例でとれば、自分の周りにある自然をもとに自分なりの自然観を作っていくというのも行動の一つですよね。道端には図鑑を引いてもわからない花がたくさん咲いていて、自分の手帳に、今日発見した自然の美しさを書き付ける。雑草みたいな花が、お金になるわけでないんです。日常の中にある、数値化できない価値や象徴資本を見つけて、関心持つことも立派な行動だと思います。例えば、イタリアは経済的に大変な状況にありますが、文化的な資本の豊かさは単純に金融資産へは換算できないし、GDPでも測れませんよね。でも、今は、そうした文化価値を大切にすることができていても、そういうものは不要だと言い始める人が出てくるかもしれない。SDGsは、ただ便利な世界ではなく、精神的にも豊かな世界を目指していますよね。今は、そういった声に、対抗できるだけの自分なりの力を持つために学んだり、考えたりする時間でもあるんだと思います。
町井)人間らしく豊かな心を持って生きる、というSDGsの根底にあるものに、一度立ち止まって、考えていきたいと思いました。すると、想いなどは個人的なものになりがちだという印象を受けるのですが、自分の中に留めずに、日常での気づきを発信していくべきでしょうか。
学長)そうですね、僕は詩集を作って人に配ったりして、あとは、歌曲などの歌詞を書いたりとか。それと、演劇の仕事もしています。当然、演出家と僕の世界観が違うこともあるけど、「僕はこう解釈しています」と意見を出していきます。自分の意見を持っている人がいろんな仕事の現場で尊重されて、実力を発揮していく。現場は結局「対話」なんです。単に流されている人って、長くは続いていないと思います。ただがむしゃらに押し付け合うのではなく、お互いが批判的思考を持って、今はないものを構築していくんです。今は、「現場で意見を出せる自分」を作る期間です。だからこそ、まずは、日常の気づきを、手帳に書くなどして、一応形にするということが重要なんじゃないかと思います。見せるか見せないかはどちらでもいいから。そうやって形にしておけば、いずれ、周囲の人と共有したり、意見を戦わせたりすることができるのだと思います。最終的に人は現場に行くんだよね。最終的には、一対一の人間観とか世界観の話になるから、その時、対話をしながら何かを作り出していけることが大切なんだと思います。
以上、岩切学長のインタビューでした。
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また、岩切学長へのインタビュー記事は、その1、その2もございますので、そちらも是非確認してみて下さい。
ここまで読んでくれてありがとうございます。また別の記事でお会いしましょう!
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